(前回の記事はこちら → 全国初の取り組み。全日制の高校でインクルーシブ教育を推進)


■40km弱を夜通し歩くナイトハイク


―――茅ケ崎高校の公式ページを拝見していて、「ナイトハイク」という行事を見つけました。


清宮 ナイトハイクは、恐らく全国でも数えるくらいしか実施されていない行事だと思います。

約40km離れた南足柄市から茅ケ崎高校まで、夜通し歩くんですよ。

夜の19時過ぎに出発して、ゴールする頃には朝になっています。


↓ナイトハイクの様子(引用:茅ケ崎高校公式ページ)

─── なかなか思い切ったプログラムですね。


清宮 かつて荒れている学校が多かった時代に、茅ケ崎高校も団結が必要だろうという機運の中で生まれた行事と聞いています。

先生も生徒も助け合わないと達成が難しいことをあえて行うことで、団結を強めたいという狙いがあったんだと思います。


――― それがいまでも続いているのがすごいです。


清宮 たしかに、この時代にナイトハイクを続けることは相当気を使います。

大きな事故や事件を起こしてはいけませんし、もし起きればもう二度とできないでしょう。

ちなみにナイトハイクは任意参加の行事ですが、生徒の1/3ぐらいが参加するんですよ。


――― いまの子たちにとっても、それだけ価値を感じる行事なんですね。


清宮 ゴールしたときの達成感がその後の人生を支える自信になったり、仲間との一体感が生まれたりしますからね。

あとこの行事のすごいところは、ナイトハイク委員の生徒はコンビニでトイレを借りると、トイレットペーパーを新しいものに交換して、トイレ掃除をして、お礼を言ってお店を出るんです。


――― そこまでするんですか。


清宮 やっぱり地域への感謝と、伝統を守りたいという想いで「来年もよろしくお願いします」と挨拶するんですね。

そういう体験も含めて、高校時代の一番の思い出として、ナイトハイクを挙げる生徒は多いですね。


■卒業式の「ありがとう」ですべての苦労が吹っ飛ぶ


――― 茅ケ崎高校の素敵なお話は伺えたので、校長先生のことも教えてください。そもそも、どうして教員になられたのでしょうか。


清宮 あまり格好の良い話ではありませんが、私は勉強が大の苦手だったんです。

特に小学校から中学校の途中まで、授業中に先生に当てられるのが嫌で嫌で仕方なかったタイプでした。


――― なにか変わるきっかけがあったのでしょうか。


清宮 中学で出会った理科の先生がすごく良くて、そこで初めて勉強が面白いと思えたんです。

ただ人と話すのも得意じゃなかったので、その時はまさか自分が先生になるなんて考えもしていませんでした。


――― なるほど。


清宮 大学に入って、恥ずかしい話なんですけど、周りの友だちがみんな教員免許を取っていたので私もなんとなしに教育実習に行ったんです。

自分でもやりながら「教えるの本当に下手くそだな」と思っていました(笑)


――― (笑)


清宮 教育実習の最終日に、「今日で終わりか」ぐらいの気持ちで学校に行ったら、生徒たちが「また先生に習いたい」って言ってくれて。

いま考えるとお世辞だと思うんですけど、当時は純粋ですから、すごく嬉しくって(笑)


――― それでスイッチが入っちゃったんですか。


清宮 教育実習の2週間は苦しかったんですけどね、最後に全部報われちゃったというか。

教員ってそういうところがあって、3年間どれだけ苦労をかけられても、卒業式で「先生ありがとう」なんて言われると全部吹っ飛ぶんですよ(笑)


――― その最後の一言で報われちゃうんですね(笑)


清宮 これが、本当なんです。その一瞬で「また頑張ろう」って思うんですよね。

そうやって教員として年数を重ねて、いまたまたま校長になっていますけども、やっぱり先生方にはそういう瞬間を味わってほしいと思います。


■インクルーシブ教育と夢


――― 清宮校長、最後に一つ質問をさせてください。夢はありますか。


清宮 これはね、一番難しい質問ですね(笑)

まあ、夢と呼べるかわかりませんが、やっぱりインクルーシブ教育の今後についてはいろいろ思います。


――― この4年間、「インクルーシブ教育実践推進校」のパイロット校として取り組まれたことは、ご自身としても大きな経験だったのですね。


清宮 そうですね、この取り組みの意義は改めてすごく感じていまして。

同時に、よくこの制度を成立させたなと。神奈川県の本気を感じましたね。


――― 前例のないことですもんね。


清宮 でもまだまだ世の中には、インクルーシブ教育が足りていないと思っています。

特別支援学校と高校の授業は、交わらそうとしても「教育課程が違うでしょ」と簡単に言われちゃうんですよ。

でもね、両方必要な生徒ってたくさんいるんです。


――― その交わりをもっと増やしたいと。


清宮 そうですね。大人たちは簡単に「できない」と言いますが、子どもたちや社会にとって必要なことですから。

そういうインクルーシブ教育の前進に少しでも関わり続けることが、私の夢です。


――― とても素敵なお話でした。インタビューは以上です。ありがとうございました。


(おしまい)

▼神奈川県立茅ケ崎高等学校(公式ページ)

住所:茅ヶ崎市本村3-4-1 TEL:0467-52-2225