1948年に創立した茅ケ崎高校は、茅ヶ崎市で最も歴史のある公立高校です。2016年には「インクルーシブ教育実践推進校」のパイロット校として県から指定を受け、共生社会の実現に向けた全国初と言ってもよい取り組みをしてきました。今回、茅ケ崎高校の校長を務める清宮太郎さんにお話を伺いました。


■茅ヶ崎に根ざした高校


――― 茅ケ崎高校はこの地域で一番歴史のある学校ですよね。


清宮 そうなんです。親子3代にわたって茅ケ崎高校という方もいらっしゃいます。


――― 親子3代で。


清宮 はい、ですから6月にある体育大会で見に来るお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんがOBOGという場合もあるんですよ。


――― それはすごい(笑)それだけで地元に根付いていることがよくわかります。


清宮 近くのTOTOで毎年行われる夏祭りにチアリーディング部が招かれたり、合唱部や軽音部、ボランティア部が地域の福祉施設やお祭りで発表やお手伝いをしたりと、地域との関わりは大切にしています。


↓70周年を迎えた茅ケ崎高校(引用:茅ケ崎高校公式ページ)

■全日制の高校でインクルーシブ教育を広げる


――― 茅ケ崎高校は「インクルーシブ教育実践推進校」として、知的障がいのある生徒の入学を受け入れていますよね。


清宮 そうですね、2016年からその取り組みが始まりました。

最近はニュースでも「多様性」や「共生社会」というキーワードをよく聞くようになりましたが、高校においてはその取り組みが十分ではなかったんです。


――― たしかに小学校や中学校と違って、高校にはクラスに知的障がいの子がいるイメージがありませんね。


清宮 はい。神奈川県は「かながわの教育ビジョン」で、インクルーシブ教育の推進を重点的な取り組みにしています。

全日制の高校でも共に学べる環境を増やすために、茅ケ崎高校を含めた三校をパイロット校に指定して取り組んでいるのです。


――― 茅ケ崎高校がモデルケースとなって、他の高校にも広がっていくと良いですね。


清宮 全国から視察に来る高校も多いので、近い将来に実現して欲しいと思います。

実際、今度の4月からは11校増えますから、全日制の高校でも段々とインクルーシブ教育が一般的なものになっていくのではないでしょうか。


■選択肢が増えることが重要


――― どうしてこれまで高校ではインクルーシブ教育が進んでこなかったのでしょうか。


清宮 義務教育が終わるタイミングであることと、あとはやはり入学に際して学力試験があることが大きいです。

今回の取り組みでは学力試験はやらず面接試験だけになるので、知的障がいのある子たちが全日制の高校に進む道ができました。


――― なるほど、そうすれば中学を卒業した後も、高校生として共に学校生活を送れるというわけですね。


清宮 もちろん全日制の高校が合わない子もいますから、絶対に来た方が良いという話ではありません。

まずはその選択肢が増えたということ自体が、大事な一歩だと思います。

その生徒やご家族が全日制の高校を望んだ場合に、少なくとも道はできたのかなと。


■生徒「特に変わったことをしていると思わない」


――― インクルーシブ教育というと、当事者だけでなく周りの子たちへの影響もセットで語られますよね。茅ケ崎高校ではその辺りいかがでしたか。


清宮 いまの子たちは小学校や中学校でインクルーシブ教育を経験していますから、むしろそれが当たり前になっているんですね。

これはアンケートからも明らかで、茅ケ崎高校の取り組みについて「特に変わったことをしていると思わない」という子が大多数なんですよ。


――― 素晴らしい話ですね。


清宮 もうとっくに、そういう時代なんだと思います。

まだ一部の大人たちからすれば珍しいと感じるかも知れませんが、すぐに一般的になっていくのではと思っています。


(次回につづく)

▼神奈川県立茅ケ崎高等学校(公式ページ)

住所:茅ヶ崎市本村3-4-1 TEL:0467-52-2225