(前回の記事はこちら→本当にやりたいこと)


――― 初個展の場所は、江ノ島の灯台だったのですね。


かとう はい。東急ハンズで働いていた先輩が、江ノ島の灯台に転職されたんですね。

その方から「絵を灯台に飾ってみたら?」とおっしゃっていただいたんですけど、前例もなかったので無理だと思っていました。

ダメもとで電話してみたら、「飾る場所じゃないのはわかってますよね?」と言われてしまいました。


――― 前例がないですもんね。なんか面倒な電話がきたぞ、みたいな。


かとう そうですね(笑)でも会っていただけることになり、絵をお見せしたら、3日後ぐらいに「できることになりました」っていう連絡をいただきました。

ただ私も、灯台の方も初めてのことだったので、展示の仕方から何からゼロから作りこんでいきました。


――― すごいですね。


かとう 12月の寒い時期の個展だったんですけど、夏っぽい水着の写真がいくつもあったので、来てくれたお客さんに「こんな時期にごめんなさい」って言ったら、「湘南に来る人ってこういうのを観たくて来るから良いと思いますよ!」とおっしゃっていただいたりして、色々な発見がありました。


↓初個展の様子 

――― プレンティーズさんの絵のように、依頼されて描くものと、個展で描くものはやはり違ってきますか。


かとう そうですね、個展は描きたいものを描くので、自我を全開にして描くのですが、お仕事ではそうはいかないですよね。

これはよく絵描き仲間とも話すことなんですけど、「自分は商業デザイナーなのか、アーティストなのか?」というのは永遠のテーマです。


――― 以前RYU AMBEさんのお話を伺った時は、「アーティストでありたい」という話をされていました。


かとう 私はどっちの気持ちもわかる部分があって、確かに細か過ぎる指示がある案件になると、描けなくなっちゃうときはあります。

ただ、私が尊敬している中沢ヨシオさんからは、「クライアントを120%満足させるのがイラストレーターだよ」という言葉をいただいて、それは今も常に頭の中にあります。 


↓中沢ヨシオさんとのツーショット写真 

――― プロ意識がとても高いご意見ですね。


かとう そうなんです。

私は、自由に描いた方が自分としては良い作品ができる気はするのですが、尊敬する方々のお言葉に影響を受けていたり、あとは情けない話ですがジョンソン&ジョンソンのトラウマで「ワガママにやっちゃだめだ」っていうのが身にしみているので、いただいた仕事については、訓練だと言い聞かせて全力で取り組んでいる部分もあります。


――― すごくかとうさんらしいお話だと思います。


かとう そもそも私は絵描きとして活動をし始めたのが遅かったので、自分に自信が持てない時期がありました。

例えば、私は藤沢ケーブルテレビのときから写真を参考にして描くということをしてきたんですけど、「絵描き」はそれすらやってはいけないのかも知れないと悩んでいた時期がありまして(笑)

そこで思ったのが、私が尊敬する長野剛さんの絵はまさに写実的なんですね。


 ↓長野剛さんとのツーショット写真 

――― なるほど。


かとう あるとき悩みに悩んで、長野剛さんに大変失礼かなと思いつつ、意を決して「変なこと伺っても良いですか?…長野さんは写真を参考にされることはありませんか?」と伺ったんです。

そうしたら、「ありますよ」ってさらっとおっしゃったんですよ!


――― さらっと。


かとう はい、さらっと。すごく嬉しくて「ほ…ほんとですか!?」と伺ったら、「かとくみさんも参考にするでしょう?」って!


――― はい。


かとう そうしたらモヤモヤが一気に晴れて!

しかも私が目指しているというか、憧れの方にノーマン・ロックウェルという方がいるんですけど、「かとくみさんの好きなノーマン・ロックウェルも写真を使っていますよね。」とおっしゃったんです。

確かに、ボストンにあるノーマン・ロックウェルの美術館に直接観に行ったことがあるのですが、そこではその絵と元になった写真が一緒に展示されているんですよ!


――― とどめの一撃ですね。


かとう それで、私はこのやり方で良いんだって思えたんです。

絵を描く人それぞれのやり方、個性でやれば良いんだって。

いまでもこの考え方は私の中ですごく強くあります。



(次回につづく→かとうくみの描き方、生き方)